2012年2月21日火曜日
ヘッドエイカー&アシッドストリッパー1~3
1
トルコ鞍部に浸水するスピリタスがローカライズした幾万の不信に君はす
べての邪念をレース編みしながら逆さまの抽象画を一枚吐き出す かなし
みとかうつくしさかエロチックなどという寝ぼけた語句を靴べらでこそぎ
落すと君の前に現われ立つのはひとりの年老いた妊婦とみがかれた肉の鎧
だけだ 馬の糞を擦り付けた外套をかざして街路は君の屈辱と怠慢で区割
された その中央をユーフラテスは流れバビロンの裸の虜囚達をフダラク
あるいは鷲宮神社へと誘導し弛んだ弓弦に吊るし干す 夢の中で見たあの
アルカディアの牝馬はまぼろし尾に隠された性器は涙を流し君の陰茎の竜
骨を3㎝ずつ齧ってゆく 行く手には成熟した塩湖があり体毛を焼き尿道
カテを抜くとバルテュスの欲望がゆがんで皺に覆われる 両手で引っ張る
と虚像は真っ二つに破れそこに君の生誕がなった 失禁した天使の股には
錆色の卵 タイタニックが激突した巨大な氷山だ さてフライパンは用意
できたか?油は敷いたか? オラトリオの首を入念に15分間絞めたらさあ
目玉焼きだ
2
理解は逡巡よりはやく犬の肛門からベアリングを運び出した 女の思想は
ゆっくりと林檎の軸索を経てミヘン街道に漂着する 豊かな街があり娼婦
は毎日愉快に身体を洗い陰毛を剃る 穢れない少年の下腹には実は何もな
く東京ディズニーランドへと繋がる浦安の長い坑道だけがある そこを女
たちは律儀に列を揃えて潜ってゆく 長く険しい苦難の道のりに突如落盤
が愛する 愛などと笑いあいながら時々女たちは影で泣くので坑道は出水
して排卵日が近い女が真っ先に流された 他の女達は手をつなぎお互いを
抱きながらアイリッシュ民謡をうたう 声は尖って少年の腹を痛ませた彼
は焼かれた包丁で腹を開いて一人二人と女をつまみ出しラム酒に漬けた少
年は裸のままで爪先から街路に刷り込まれていった 多くの女達を坑道に
残しながら少年の身体はミッキーマウスのグラフィティになった やあみ
んな!ぼくミッキーだよっ!ハハッ!若本規夫の声で再現された挨拶で弾
けたハイネケンが空を飛び炭酸ガスが街に撒き散らされ充満し霧になった
女達はミッキーの尻尾に擬装した卵管から生まれ出てきた みんな小人に
なっていた もう言葉はなくハイホーハイホーとしか言えなくなっていた
グーフィーの結腸からシンデレラ城が建てられる ハイホーハイホー小人
達がミッキーを絵からひっぺしてその肛門を次々と指で犯した 小人達は
小躍りしながら叫ぶ 夢と魔法の王国東京ディズニーランドにようこそ!
3
マヤ遺跡の突端の上に少女が座っている 先鋭化されたククルカンの先に自
分の膣をはめこんで思いもかけずそこに時間は完成してしまった 痛みはな
かったが少女はまだ処女だったので破瓜の血をながした その血はカスティ
ージョの階段を滑り降りて山羊の額に当たった 山羊はその顔を歪めてゆき
生贄の不当性と人権擁護または動物愛護精神を高らかに唱え始めた 切断さ
れた生首がごろりごろりと転がってゆく 少女はようやく股から尖塔を抜き
取ると目の前にパスされた恋人の首を全力でラインの外へクリアする 審判
がリコーダーでレ#の音を吹くと瞬きの振幅に楽園が像を結んだ 幻覚の値
踏みを皆ですると人殺しなどさも当然とばかり言う蛮族たちが楽園へと攻め
込んでくる しかしそれは眼の中にしか存在しないので誰もがその場所を知
らない 蛮族はむごい拷問を試行錯誤しながら開発し男達を手足を車輪で折
ったがついに楽園がどこか知ることがなかった 少女は股から血を流しなが
ら泣いた 止まらなかった血は段々と海をかたちどり水位は上がっていった
泳げないものたちはそれぞれ折れた手足を櫂にして浮き上がり泳いだ 血は
収まらずついに陸地はすべて血の海に沈んだ 少女は自分が生み出した海を
背泳ぎで渡る 上空からは星は真赤に見えた 我々天文学者は協議した
望遠鏡で見たあの星はなにかと ひとりが応えた あれが火星だ
見知らぬ海に
昨日の建材も豊かに
見慣れた今日はまた建設される
その一隅の
掃除具のない部屋で
私と君の生活は
すでに完成されたルーチンを
落ちるように
繰り返し回想していた
窓を横切る
おおきな鳥の影が
つかわれた歳月を告げていた
ひとつの虚勢もなしに
私と君は小さな火を囲む
燃え落ちてゆく豊かさが
ひととき私達の掌を暖める
陽の傾く部屋からは
くらい砂丘しか見えない
足の一本折れた
黒い長椅子
飲み口の欠けた
白磁のティーカップ
訪れる人はみな
忙しげに去ってゆく
私達は一様に
もてなしが下手だから
広い空間には
いつしか扉がなくなった
私の身代わりがないように
君の身代わりもまたない
私達の生活は
蔓が絡むように
互いを支えあい高く伸びて
しかし伸びるほどに
自らの重みで折れ曲り
地面に垂れ擦っている
しかしその安らぎは
君を魅惑して離さない
今日もまた
私達は砂丘をながめる
どうしようもなく止まり続ける風景の
僅かな陰影のうごきに
君は目を瞑り
私は一喜一憂する
どんな嘘で君を欺けるのだろうかと
私は過去の書物や
人の言葉に助けを求める
しかし
世の中のどんな正しさも
君を動かすことはできない
だがそれが既に
君への欺きの始まりだった
私は砂丘の向こう
佇み続けた風景の果てへ
ひとつだけの
細い蔓を伸ばしていた
見知らぬ海があった
私達の部屋では
嗅いだ事の無い風が吹く
どこへ向かうのか知れない
速い潮流があり
嵐が吹き
時に凪になり
私はそこで
何度も繰り返し溺死した
昨日の建材も豊かに
見慣れた今日はまた建設される
その一隅の
掃除具のない部屋で
私と君はまた
小さな火を囲んで
ひととき掌を暖める
そして今日も
二人でくらい砂丘を見つめる
私は立ち上がり
上着を脱いで
そっと
君の背中に掛ける
あの砂丘の向こうの艀に
私は一艘の船を待たせている
海を渡るには頼りない
一人乗りの小船を
雨の四連
雨の時間のなかを その気まぐれのように打たれていた
停滞し 立ち止まっては上昇し 天に放り上げられ
落下の日付が誤植されたカレンダーを おそるおそる覗いている
春のようだった 夏のようだった
秋のようだった 冬のようだった
その時々の季節で 彩色は滲んでは乾き 混色しては変容して
禁忌色と交接しては地の額縁のなかの絵を
恣意に依らず様々な色で濡らしていった
雨が静かに降り注ぐ 時間は激流のほとり
河原の石に腰掛けその流れを傍観する
カンバスは乾き もう筆を入れる余地は少ない
消すことのできない過失がまざまざと残り
完成されつつあった絵はもはや理想のものとは遠くはなれ
雨粒に浸されながらしかし滲みすらしないことに
もはやよろこびも かなしもない
地の額縁のなかに残された僅かな余白 それが全てであるように
季節の抱いた明かりを取ろうとして目を細め
そして長過ぎる回想の為に瞑られる
豪雨がやってくる 激流は河原を溢れ 男を呑み込みにやってくる
自らの全てだったカンバスを守ることもなく
男はただ逃げ惑い 誰構わず助けを乞う
それが最後の彩色となるももはや目は失われ
その彩りを見ることもかなわない
濁った流れが襲ってくる
男が最後に開いた言葉はなんだったか
怨嗟 悲嘆 諦念 哀願 そして憐憫
雨はそれらを洗い流さない
地の額縁は崩れた砂のなかから 色彩を浮かばせる
しかしすでに絵は男から離れた
天に投げ上げられた身は時間の流れに呑み込まれる
そして長く短かった雨は止んだ
激流を形作っていた河も一瞬で乾き果てた
しかしその最後の一滴に男はいた
男は天を見上げ 地を見渡した そして気付いた
自らの全てと思い描いた絵は
大地のほんの一角を彩ったにすぎなかった
自らの恣意に依らず描かれた絵は
しかし男の全てを記録したその絵は
極彩色に暮れゆく空の たったのひと欠片だった
余りに広すぎた人生の余白に男は悔やんだが
もう男にやり直す術は無かった
男の最後の一滴は天へと蒸発していった
空のかなたで積乱雲が増長する そのなかへ男は赴いた
一滴の 誰かを打つ雨となるために
2012年2月4日土曜日
無題
拾ってはいけない
と禁じられた
かつて砕かれた幻影を
拾いあつめ
破片を繋ぎ合わせようとして
一つ足りない
私はそれを
失った人々の肯定のなかに求め
あふれ出した仮想の時間に
押し流されては
幻影はついに不具のまま
私の前へ立ち現われる
壊れた幻影は私を愛さず
欠損した肉体の一部として癒着した
暗い生活がうごめいては
私を殴る
苦い覚醒がやってくる
伸ばされた視線の先には
切断の未来
あるいは縊るには短い影の地平があり
しかし私の肉体は
6時方向からやって来て
脇道に逸れることもなく
0時方向の苦悶へ向かおうとする
肉体に精神を引き摺られ
崩落しかけの希望の上を歩いてゆく
壊れた幻影を抱き
裸の足裏に砕けた明日をくっつけて
精神の周囲は300億光年の檻
私は目を細める
そしてそのまま真っ直ぐに歩き出す
悪酔い
いつまでも悪酔いが醒めないので
所かまわず反吐をぶちまけると
少しだけ詩人になったような気になる
吐寫のやりようにも多少のエレガントさや
または気の利いたエスプリなんかを求めれば
居酒屋のトイレや電柱の影では物足りないので
俺はカビくさいスーツをまとい
ボサボサの髪を少しは整えて
俺とは何の関係もない賑わった立食パーティや
華美な結婚披露宴なんかに飛び込んでは
せっつく胸のむかつきの奔放さや
不整合な一瞬の静けさまたは
ありきたりな喉の酸っぱさのままに
紳士や淑女の衣裳へ反吐をぶちまける
あたりをびちょびちょに汚して
お高い床材やカーペットも胃酸で焼いて
そこでごめんなさいと土下座して謝って
何万か何十万かの弁償や賠償金を払うくらいなら
俺は反吐で喉をつっかえて死んでいい
俺は悪びれずに反吐を吐き続けて
どうだい俺の胃の内容物は?イカスだろ
これは昨日の晩飯のエビフライさ
これは十年前に失恋した時に
ヤケクソで食った煙草の破片だよなどと
場の空気なんか読まずに講釈垂れて
紳士淑女からリンチに遭うべきだ
ゲロ跳ねて服が汚れようが関係ない
胃の中がからっぽになるまで
所かまわず反吐を吐き続ける
悪酔いが醒めないんだ
脳内活動的にノンフィクションなポエム
毛細管現象が跋扈して
太陽の余光を暗い空が啜っている
幽かな悲鳴がこだまして
僕はカーテンを閉める
言葉が無秩序に積みあがって
その意味も確かめられぬまま
溺死した少年は企てに荷担する
高架線は乗っ取られて
操縦席の回顧に共鳴して
梅雨前線は南下するでしょう
システムキッチンが夢なんですよ
ええ 離婚しちゃいました
指輪は売っちゃいました
子供が晴れ渡った空の喉笛をかみ切って
泣いている ああ
発売された犬小屋のペーソスに乗っかって
ヴァンアレン帯に引っかかって
どこでもドアは囲繞され
ぼくドラえもんです
うにょうにょです
滑ってどっかん
ぶっ壊れたテトリスのように
いびつに積みあがった言葉の卒塔婆
そのどれもがなぜか舌に甘く
僕は食欲をかきたてられ
冷凍庫のアイスクリームを思い出す
心を抜き去って立ち上がると
僕は倒れた
そして僕は食用にされた
かわいそうな象の物語や
男として見れないから ゴメンね
とかいった見知らぬ辛い経験を
煩悶とともに繰り返し
嘲笑う旧友の尻を
怒りを込めて思い切り蹴ったら
そこは蝉しぐれが五月蝿い明日の朝だった
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