2012年2月21日火曜日
見知らぬ海に
昨日の建材も豊かに
見慣れた今日はまた建設される
その一隅の
掃除具のない部屋で
私と君の生活は
すでに完成されたルーチンを
落ちるように
繰り返し回想していた
窓を横切る
おおきな鳥の影が
つかわれた歳月を告げていた
ひとつの虚勢もなしに
私と君は小さな火を囲む
燃え落ちてゆく豊かさが
ひととき私達の掌を暖める
陽の傾く部屋からは
くらい砂丘しか見えない
足の一本折れた
黒い長椅子
飲み口の欠けた
白磁のティーカップ
訪れる人はみな
忙しげに去ってゆく
私達は一様に
もてなしが下手だから
広い空間には
いつしか扉がなくなった
私の身代わりがないように
君の身代わりもまたない
私達の生活は
蔓が絡むように
互いを支えあい高く伸びて
しかし伸びるほどに
自らの重みで折れ曲り
地面に垂れ擦っている
しかしその安らぎは
君を魅惑して離さない
今日もまた
私達は砂丘をながめる
どうしようもなく止まり続ける風景の
僅かな陰影のうごきに
君は目を瞑り
私は一喜一憂する
どんな嘘で君を欺けるのだろうかと
私は過去の書物や
人の言葉に助けを求める
しかし
世の中のどんな正しさも
君を動かすことはできない
だがそれが既に
君への欺きの始まりだった
私は砂丘の向こう
佇み続けた風景の果てへ
ひとつだけの
細い蔓を伸ばしていた
見知らぬ海があった
私達の部屋では
嗅いだ事の無い風が吹く
どこへ向かうのか知れない
速い潮流があり
嵐が吹き
時に凪になり
私はそこで
何度も繰り返し溺死した
昨日の建材も豊かに
見慣れた今日はまた建設される
その一隅の
掃除具のない部屋で
私と君はまた
小さな火を囲んで
ひととき掌を暖める
そして今日も
二人でくらい砂丘を見つめる
私は立ち上がり
上着を脱いで
そっと
君の背中に掛ける
あの砂丘の向こうの艀に
私は一艘の船を待たせている
海を渡るには頼りない
一人乗りの小船を
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