2012年1月21日土曜日
アメリア・フォスターを追いかけて
君の手をにぎって
君の手をしっかりとにぎって
はなれないように
はなさないように
夏の街を歩く
妻はすぐに
自ら死のうとするから
僕は君の手をにぎって
しっかりとにぎって
はなれないように
はなさないように
妻の病は不治だという
その事実に
妻はすっかり絶望しきって
憔悴した顔で
あらぬ虚空をみつめて
蝉の声を聴いている
僕は大丈夫
きっとなおるよと
君を元気づけようとする
けど僕自身
もう何度も繰り返して
すっかり擦り切れてしまった
その言葉が
なんのちからも宿さないことに
打ちのめされながら
往来のはげしい車道に
今にも
飛び出していってしまいそうな
君の手をにぎって
しっかりと
はなれないように
にぎって
アメリア・フォスターを訪ねに
木々の陰にかくされながら
夏の街をあるいてゆく
アメリア・フォスター
彼女が何者なのか
僕はなにも知らない
アメリア・フォスター
名医なのか超能力者なのか
なにもしらない
だが妻を助ける一縷の希望として
僕はこの街まで
彼女を訪ねにやってきた
でもこの街に彼女はいなかった
いるのは拗ねた藪医者
エミリオ・ファースター
その豪華な診療所で
妻は息絶えた
血にまみれたその胸に
僕たちの赤ちゃんがいて
懸命におっぱいをせがんでいた
僕は石灰のかたまりになって
動かない君の姿をみつめていた
君の手をにぎって
君の手をしっかりとにぎって
はなれないように
はなさないように
夏の街を歩く
ただ僕のとなりを
憔悴しきった顔であるく
今すぐにでも
自ら死のうとするような
君の手を引いて
はなさないように
はなれないように
しっかりと手をにぎって
夏の街を歩いてゆく
アメリア・フォスターはどこにもいない
いるのはエイミー・パストや
アイザイア・フォッカー
彼女ではない者たちの
その先々で
妻は死んでしまう
僕が目を離したすきに
彼女はさまざまな姿で死に
僕を白い彫像にしてしまう
僕たちの赤ちゃんだけが
そこに生きている
君の手をにぎって
君の手をしっかりとにぎって
はなれないように
はなさないように
夏の街を歩く
これは夢なのか
あれが現実なのか
もう何もわからなくて
ただ君の手だけがあって
僕はそれを引いて
夏の街を歩く
はなれないように
はなされないように
君の手をにぎって
君の手をしっかりとにぎって
木々の陰にかくされながら
夏の街を歩いてゆく
アメリア・フォスターを訪ねて
アメリア・フォスターを追いかけて
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