2012年1月21日土曜日

鏡のなか


*上下から中央へと読み進めてください


世界は
古い鏡と
朝と



君が僕の似姿なのか
僕が君の似姿なのか


静かに
降りしきる
闇のなか
鏡がいとしげに
僕を呼ぶ

僕は
はっきりと
熱を維持しながら
それを君に
伝播させる手立てを
持たない

鏡の
こちら側に
何か大事な
きっと大切な
忘れものをして

黒髪の少女は
少しだけ
眉をひそめて
無言を抱きしめ
僕を
見つめる

白磁の顔に
漆黒の瞳が
深々と
鏡の奥に
沈んでいる

鏡の向こうの
君へと
飛翔する声は
ずっと
羽を折られている

小さな身じろぎや
ひとつの吐息が
この夜の卵の
殻をこわして
朝を
呼んでしまうから

僕は
無言のままで
幾度も幾度も
君へ語りかけてきた

太陽は
鏡のなかの
君と
僕との周りを
ぐるぐると廻り

朝を鏡像として
過ごし

夜には
僕は君を
君は僕を
見つめる

君のその瞳は
未孵化の言葉
僕を
うちふるわせる
予感をかかえ

しんしん

さびしく
共鳴している
君は
僕の

しかし
黒髪の少女は
何ひとつ
応えることをしない
ただ
無言のなか
かなしげに
眉をひそめて

そして
いつものように
朝の陽が
ひっそりと
でも乱暴な仕方で
鏡へ侵入すると
少女は霞んで
やがて消えていった

そして
鏡の前には
僕ひとりが
取り残される

鏡のなかへ
僕は入りたい
鏡を壊した
その先は
どうなっているのか
僕は知りたい

そんな願いを
無為に遊ばせながら
僕は
夜が訪れる
その度に
鏡の前に立った

そうやって
ただただ
少女を見つめて
心の中で
そっと語りかけ続けた
何日も
何年も?

それももう
数えることをやめ
いつものように
僕は鏡の前に立つ

今日は
どんな話をしよう 

鏡を
打ち壊す
その時まで

その後に
思い浮かぶ
がらんどうという
絶望から
脱げ出せる
その時まで


僕と
君は

ただ



見つめあう



ただ

きみは
わたしと


夢みて
その瞬間を
きみと出逢う
いや果てで
時の
遥かな

見つめあう
きみは
わたしと
朝が来て
そしてまた

ひどく恐れさせる
わたしを
大きな空洞が
想起される
でもそのあとに

選択させる
砕くことを
この鏡を
時折

欲求が
どう仕様もない
きみの感覚への
きみの声や

見つめあう
きみと
わたしは
疑惑は燃されて
朝には
そして

さがす
怯えつつ
自愛を陰を
わたしは
わたしの鏡像に
のこされた

きみは消えてしまう
夜が訪れると

音叉のように
遠くはなれた
予感する
ひそかに
ふたりの会話を

流しこみ
結ばれた心へと
発語を
戒められた
そして

立ち続ける
わたしは
鏡の前に
ながい腐乱のなか
夜の

亡霊にする
くらい
わたしを
その前に立ち続ける
または
というきみを
黒髪の少年
という存在が
この古い鏡

鏡にふれる
きみも
鏡にふれると
わたしが

わたしを見つめる
きみは
憂いを湛えて
肉体をそなえ
感覚できない
わたしの
鏡面のなかで
少年という



わたしがきみの似姿なのか
きみがわたしの似姿なのか



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