空とデスマスク
急流の河の中洲に
ひっかかっている暗い時代に
白い大きな布をかぶせ
男が空の絵を描いている
男が筆を次々に走らせると
それは次第に
若くして死んでいった
少年のデスマスクとなった
少年の鼻梁の陰には
不思議と男の所有しない色がにじみ
少年の白い両瞳のなかには
捉えられない空が渦を巻いていた
男は少年の瞳のなかに
鳥を見つけられない
雲を見つけられない
ただ深く寒く しかし青い空
空だった
少年の白い頬に陰が差す
それは男自身の影だったのか
上空に雲はないので
男は一旦少年から遠ざかると
一時河の濁流に視線を投げて煙草を吸った
男にとって
少年はとうに失われた
だから少年の白い瞳には
男の姿が映ることはなかった
河の中洲で
男はひっかかった暗い時代を過ぎた
男は布を引き剥がした
河の水で描いた 空を
その下には
しなだれることのない
ひなげしの花が咲いていた
男は空を仰ぎ見た
やはりそこには雲はなく
鳥は飛ばなかった
しかし果てなく深く青い 空
空だった
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