2012年1月24日火曜日

空とデスマスク


急流の河の中洲に
ひっかかっている暗い時代に
白い大きな布をかぶせ
男が空の絵を描いている


男が筆を次々に走らせると
それは次第に
若くして死んでいった
少年のデスマスクとなった


少年の鼻梁の陰には
不思議と男の所有しない色がにじみ
少年の白い両瞳のなかには
捉えられない空が渦を巻いていた


男は少年の瞳のなかに
鳥を見つけられない
雲を見つけられない
ただ深く寒く しかし青い空
空だった


少年の白い頬に陰が差す
それは男自身の影だったのか
上空に雲はないので
男は一旦少年から遠ざかると
一時河の濁流に視線を投げて煙草を吸った


男にとって
少年はとうに失われた
だから少年の白い瞳には
男の姿が映ることはなかった


河の中洲で
男はひっかかった暗い時代を過ぎた
男は布を引き剥がした
河の水で描いた 空を


その下には
しなだれることのない
ひなげしの花が咲いていた


男は空を仰ぎ見た
やはりそこには雲はなく
鳥は飛ばなかった
しかし果てなく深く青い 空
空だった




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