2012年1月21日土曜日

月の蜜


まあるい月が とろうりとろりと溶けだして
夜空を流れてゆくものだから

ああ もったいない と思った少女は
夜空に寄りそって流れた月を やさしくなめとった

あれ ずっと月って冷たいもんて思ってたのに
けっこう熱いんやね 舌やけどしそうやわ

少女は流れる月をぺろりぺろりとなめとりながら
すこしづつ すこしづつ飲みくだす

お月はん すっかりのうなってしもた
なんかまっくろうなあなぽこみたいや

月のぬけたまっくらな穴のなかから
時おり 小さな何かがぼうっと光るのを少女はみつけた

あれ いったいなんなんやろ
ようわからんけど きれいなあ 

きがつくとからだの中がぽかぽかとあたたかくなって
少女のからだは うすぼんやりと光りはじめた

するりするり 少女は自分のからだが何枚にもはがれてゆくのを感じた
ゆっくりと何重にも何重にも少女のからだは脱皮してゆく

月の穴のなかの光も 少女のからだが脱ぎおとされてゆくのにあわせ
ぼんやりぼんやりと光りながら 少女であったものに近づいていった

それは鳥のようにもみえたし 虫のようにもみえた
ぼんやりと でもうつくしく光るのをみながら少女ははっきりと思った

ああ あれはかげろう
あれは宇宙かげろうや

少女であったものは濡れた翅をゆっくりとひろげると
夜空のふかすつめたい風にさらす

ゆらりゆらり 優雅に翅をはためかすと宇宙かげろうは飛びたった
ふわふわと舞い ゆらりゆらりと風にのって

もういっぴきの宇宙かげろうはよろこぶようにくるりとまわる
月のむこうのかげろうの国 今ごろそこはきっと恋の季節だ

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