2012年1月25日水曜日

僕と菅原道真公


学問の神様である
菅原道真公を祀った神社が
僕の住む町にあって

僕は幼い頃から
道真公の庭とも言えるそこで
遊び育った

その神社は名前は
そのまんま
菅原神社

道真公が京から放逐されて
大宰府への苦難の旅の途中
一夜を宿を求めて農家に訪れた折

公を一度は受け入れたものの
そこの農民が後難を恐れて
その夜 鶏を無理やりに鳴かせた

そして朝が来たのでもう出ていけと
公らを家から追い出したのだが
後に祟り神・天神さまとなった道真公に
恐れをなした農民が
祟りが起こらぬよう建てた神社だった

そんな情けないエピソードを持つ神社ではあるが
幼い僕がそんな話や
天神さまの祟りなど知る由もなく
結構不届きな所業を働いたりした

神社の敷地内の林で
友達のモデルガンの撃ち合いをしたり
堀のように神社を囲む池で
鯉を釣ったりもした

そのたびに宮司のおっさんから
ひどく怒られたりしたが
僕はめげずに天神さまの庭で
遊び放題あそんだ

そんな感じで
僕は成長し
中学三年生になった

その日は友達の瀬良野くんと
やっぱり神社で遊んでいた
池を渡す橋の欄干の上に立ち
バランスをとりながら歩いていくという
まあ馬鹿な遊びだ

瀬良野くんがうまいこと欄干を渡り終え
さて僕のばんと欄干に足をのせた時
僕は欄干の丸みに足を滑らせて
どっぽんと池に落っこちてしまった

けたけた笑う瀬良野くん
僕はずぶぬれの泥だらけになってしまった
池をぐっぽぐっぽと歩いて上がると
あらわになった僕の姿は
真っ黒でそれはひどいものだった

ああこんなじゃ家に帰れんばいと
僕が困っていると瀬良野くんは
ああ あすこに奇麗な池があるけん
そこで洗うたらええっちゃ
と神社の脇にある小さな池を指差した

「道真公御手洗の池」
小さな立看板にそう示された池は小さくて
たしかに奇麗な水が張られていた

これはいいやと
僕はその池にどぷんと浸かり
まるでプールで遊ぶように池の水ではしゃぎながら
体についた泥を落とした

その時
こら!なんしようとやこのわるそぼうず(注:いたずら小僧を意味する方言)どもが!
と おそらくこの池の管理をしていると思われるおっさんから
こっぴどく怒られてしまった

天神さまの罰が当たってもしらんぞ!
さあはよ池から出ていきやい!
おっさんの怒鳴り声を背中で聞きながら
瀬良野くんと僕は飛び出すように池を立ち去った

だがその時も僕は
天神さまの罰 なんてものを恐れたりはしなかった
そんな非科学的なものがあるはずがないと
ほとんど高を括っていた

そんな事件があった事も忘れるくらい日々が過ぎた頃
僕は受験勉強に向かわねばならない季節を迎えていた
大好きな女の子の由希ちゃんと同じ高校に入りたい
なんて野望を持ちながら
できたら由希ちゃんと一緒に自転車通学したい
なんて夢を遊ばせながら

だがそんな時
夢想にふける僕に
過酷とも言える
衝撃的な事実が突きつけられた

僕は馬鹿だった

中学三年生にもなってbe動詞すらも満足に知らない
数学では担当の教師が嫌いだったせいか
関数なんて 何それ?って具合に

僕は馬鹿だった

由希ちゃんの志望する高校は
僕の偏差値の15も上の高校
担任の教師から
おまえの意気は買うが 現実を見ろ
と諭され


ああ!
菅原道真公!

僕は馬鹿でありました
僕が馬鹿でありました

森でサバイバルゲームなんて
池で鯉釣りなんて
さらに公のお手を洗った池でプール遊びなんて

ああ!
菅原道真公!

僕を許しておくんなまし
馬鹿な僕をお助けくださりませ

僕は毎晩道真公に祈りをささげた
道真公 道真公
ああ道真公
おお道真公

僕は毛嫌いしていた学習塾に通うことも決め
悪あがきとも言える戦いを始める決心をした
由希ちゃん待ってておくれ
僕はがんばるからね と

道真公の手助け
とも呼べないくらい緩やかに
僕の偏差値はよれよれと上昇していった
関数も勉強した
be動詞だって知ってる

しかし僕の努力もむなしく
担任の教師は姿勢を崩さなかった
おまえの最近の頑張りは認める でもな・・

由希ちゃんの笑顔が遠のいてゆく
ああ憧れの自転車通学よ
僕は涙を枕に吸わせむせび泣いた

結局僕は志望をワンランク落として
八割がたはいけると思われる高校を受けることにした
由希ちゃんを思うハートを
ズキズキと傷ませながら

受験当日
現実感のなさにふわふわとしながら
出発の準備をする僕に
とおるちゃん 受験がんばってな
これやるけん絶対合格やけの と
常日頃僕を可愛がってくれる祖父が
僕にひとつのお守り袋を手渡してくれた


学業身守
大宰府天満宮


うわあ

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