兄は三十年
土を練り続けた
その三十年間
兄は土を練ること以外
何もしなかった
これは表現ではなく
まさに一切
何もしなかった
兄は三十年
一心不乱に
ただ土を練り続けた
その三十年
千変万化する兄の土を見て
私は大きくなった
三十年のあいだに
兄の土はひどく醜くなり
稀にこの上なく美しくなった
そして三十年経って
兄はひとつの
いびつな水差しを作り上げた
父はそれを抱えて
方々へ売り歩いたが
どこに持っていっても
値がつく事はなかった
今その水差しは
我が家の食卓に据えられている
母は嬉々として
毎朝水差しの水を替えている
そして昨日
兄はまた土を練り始めた
やはりそれ以外の事は
一切何もせず
ただ一心不乱に
兄は土を練っている
私は兄の土を見ている
次の三十年のあいだ
千変万化する
その土を
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