2012年1月21日土曜日

僕のうんこドラゴン


これ うんこやな
どうみてもドラゴンには見えんし

クラス委員のオバタ君がそう言ってから
僕の描いたドラゴンは
なんとうんこになってしまった!

秋口になって年に一度の体育祭が開かれる頃
僕たちの二年二組のための
クラスだけの応援旗をつくろうという話がもちあがった

そこで旗のデザインを任されたのが僕だった
美術の成績がわりと良くて
描いた絵が学校の玄関になんか飾られたりする僕だった

僕はほとんど喜色満面でこの話を受け
自信に満ち満ちてこの応援旗のデザインをかんがえた

すぐにドラゴンを描こうと思いついた
秋空の中を縦横無尽に駆け巡り
首をもたげてかっこよくうねるドラゴンだ

あたまの中でかっこよくとぐろを巻くドラゴンを
僕はそのまま絵にしようと思い
大きな布に絵の具を塗りたくった

中学校の技術室のなかで僕は放課後を殆ど缶詰めになって
ドラゴンを描くことに夢中になった
ドラゴンは頭からゆっくりと白い布に姿を見せ
少しずつその威風をあらわにした

一週間が過ぎて ついに僕はドラゴンを完成させた
大きな布の上 空中にとぐろを巻くドラゴン
僕は鼻高々でクラスのみんなを呼び寄せた

どんな賞賛を浴びるだろうか
僕はワクワクしながら
賞賛の受け答えさえ用意するような有様で
まさかオバタくんから
これ うんこやな
なんて言われるなんて露ほども思っていなかった

僕の応援旗を一目見たオバタくんの発した
これ うんこやな
から僕のかっこいいドラゴンは
次第にうんこまみれになっていった

クラスのみんなが
口々にうんこうんこと唱えるので
おそるおそる僕も見直してみると
茶色の腹に小さな頭 そしてぐるぐるととぐろを巻く姿が
だんだんうんこに見えてきてしまった

健康な男の子のひねりだした
元気いっぱいのうんこだった

僕は意識のなかばまで皆に同調しそうになりながら
なんや!やったらお前らがかっこいいの書いたらいいやんか!
おれはもう知らんけな!
といわば逆ギレをして出て行ってしまった

僕のプライドはズタズタだった
それまでの自信も賞状なんか貰って喜んだ思い出も
みんな意味をなくしてしまっていた
おそらく人生初めての挫折だった

僕はそれから毎朝親に
頭が痛い、吐き気がするなどと言い訳をして
学校を休むようになった
いわゆる不登校というやつだ

昼もさしかかった布団のなかで
僕は描いたドラゴンを思い浮かべていた
みんながうんこうんこと言いだしてから
もう僕のドラゴンは普通のドラゴンには戻れなかった

きっと応援旗はクラスで一番絵がうまいワダ君あたりが引き継いで
かっこいいのを作り上げるんだろう
僕はあたまの中で見もしないワダ君の応援旗と
自分の描いたうんこドラゴンを比べてもだえ苦しんだ

体育祭の朝がやってきても僕は布団から出なかった
ワダ君のかっこいい応援旗が秋空にはためく光景なんて
見ていられたものじゃない
僕はほとんど呪詛していた
雨が降って中止になればいいのに
いや大地震でも起きて学校が潰れればいいんだと

次の日になって僕はのそのそと学校に登校した
まるで負け犬の気分だったが
クラスでは誰も僕のことも
うんこドラゴンのことも話題にしなかった
みんなは昨日の体育祭のことさえ忘れたように
今日の話をしている
僕はちくちくする心を上手にしまってから
みんなの話に加わっていった


それから数日経って
クラスに体育祭の写真が焼きあがったと知らせが入り
体育館に呼び出された
体育館の壁に何百枚もの写真が張り出されている
そこには僕の知らない体育祭の光景があった

クラスメートのマスダ君たちが僕を呼んでいる
行ってみると二年二組の集合写真が飾られていた
笑っているみんなの中央には
僕の描いた応援旗が秋空にはためいていた

ドラゴンはうんこドラゴンのまま
やっぱり健康な男の子のひねりだした
元気いっぱいのうんこだった

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