2012年1月21日土曜日

五木家の面々


今日、弟の五郎が死んだ
突然の思いがけない死だった

太郎にいさんと三郎にいさんは
歯をくいしばって
きぃきぃと泣いている

二郎にいさんは
黙ったまんま
茶色の虚空を眺めている

弟たちは
それぞれの仕方で
きぃきぃと泣いている

四郎である僕は
末の弟の末吉から
五郎の死に様を聞き
やはり歯を食いしばって
きぃきぃと泣いた

五郎は突如噴霧された
毒ガスにやられ
よろよろになりながら
家へ帰ろうと必死に足をひきずり
しかし大きな網目の板につぶされ
息絶えたという

ああ!五郎よ!
聞かん坊で
目立ちたがり屋だった五郎!
兄たちにはちょっとばかり
反抗的ではあったが
弟たちにはいつもご飯を分けてあげた
優しい五郎!

四郎である僕は
五郎の弔い合戦に挑もうと決意した

お前が行って何になる
返り討ちにされるが落ちだ
五郎のことは返す返すも口惜しいが
ここは俺たち兄弟の行く末を考えよう
太郎にいさんが生真面目に言う

お前のちからじゃ到底無理だ
やつらには傷ひとつつけられはせん
ここは五郎のために
ひとつ皆でブルースでも歌おうじゃないか
二郎にいさんがクールに言う

やめてくれ四郎
もしおまえまで死んでしまったら
おれはどうすればいいんだ
きぃきぃ
三郎にいさんがすすり泣きながら言う

弟の六郎・七郎・八郎が
兄さんやめてくれ
やめてよ兄ちゃん
行かないでおにいちゃん
と僕をとめる

ただひとり
末の弟の末吉だけが
おにいちゃんがんばって!
あいつらを
ぜったおぶったおしてきてね!
ぼくおうえんするから!
と四郎である僕を励ます

僕は決意を固めた
おのれ弟の仇
おのれ
おぞましいけだものどもめ!

四郎である僕は
高いビルの上からやつらを眺めた

汚らわしいけだものどもは
汚らわしい姿でぐちゃぐちゃと
汚らわしく飯を食っている
僕は怒りに身を震わせた

この恨み
晴らさでおくべきか

僕は茶色にかがやく
自慢のきれいな翼をふるい
けだものたちに襲いかかった

四郎ー!
シロウ・・
兄ちゃん!
兄弟たちの声が聴こえる

みんな
僕は絶対に負けない
絶対に
勝ってくるからな!





      ぎゃー!
      ちょっちょゴキブリでた!
      お母さん殺虫剤!
      あー飛ぶな ばかー!
      うわっわっ!こっちくんな!
      お母さんはやく!
      はやくって!
      ああはい これ
      よっしゃ!
       (プシュー)





しろおぉぉぉぉぉぉ!
シロウ・・・
兄ちゃん!
おにいちゃぁん!




五木家は今日もお葬式
兄弟たちは
はるか遠くで
けだものと戦い朽ち果てた
優しく勇敢な
愛すべき兄弟
四郎の亡骸を思い
歯を食いしばって
きぃきぃと泣いた

おのれ

おのれ
けだものどもめ


この恨み
晴らさでおくべきか

五木家の兄弟たちは
食器棚の影で
冷蔵庫の裏で
流し台の下で
今日も
恨みに胸つぶされて
すすり泣く


きぃきぃ


きぃきぃ・・

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